お金持ちの地主さん 3

A地主さんの亡母親の実家は82歳位の兄が実家を継いでいるという。つまり、A地主さんの伯父さんという関係です。

この甲地主さんはA地主さんより何倍も大地主さんらしい。

 

A地主さんから「甲地主さんの所に一緒に行こう」と誘われたので出掛けた。

立派なお宅だが、客間は薄暗く、雑然とあちこちに物が散らばっている。

甲地主さんだろうか、痩せた背の高い穏やかそうな男性が迎えてくれた。

紹介された後、居間に通され、どうぞと言って着席を勧められた。         

A地主さんの話だと、甲地主さんは元役人でかなりの地位まで出世されたらしい。物腰は柔らかく、穏やかな方だった。

話の内容は、先祖伝来の多くの不動産を所有している事や、不動産にまつわる色々なお話だった。

「戦時中は空軍が我が家の土地を滑走路に使っていて、戦後それは現在の環状7号線になっている」とか、

あちらに、こちらにと一杯所有地があるらしいが、私は場所すら分からなくなってきた。

兎に角、たくさんあるのだ。             

話の終わり頃、多くの所有不動産の内、京王線の新宿から5分位の駅の所にあるファミリータイプのマンションのお部屋が3部屋あいているので、募集をお願いしたい。と言って鍵を渡された。

途中、高齢の女性がお茶を出してくれた。「有難うございます」と言ったが、小さな声で

「どうぞ」としか聞こえなかった。彼女は20畳ぐらいの居間の端の椅子に座っていて話には入ってこなかった。1時間半位しておいとました。

帰り道A地主さんが「おばさんは隅の椅子で話をズート聞いているんだ。何も言わないけれど全てを知っている」

(お茶を出してくれた方が奥様なのだ。初めての来訪者の私を、ずっと観察してたのかな?ちょっと気味悪い)    

その後、私は甲地主さんの所に行く用事が出来たので、一人でお邪魔した。

しかし、用事がないのに、「ちょっと来てください」と呼ばれて行くことの方が多かった。

その頃は幾つかのマンションの部屋も預かるようになっていた。

甲地主さんの所にお邪魔すると、奥様が出て来て軽く挨拶され居間に通される。 

私が滞在している間、奥様は隅の椅子にずっと座っている。

大金持ちの地主さんだが、ブランドものの服を着ている訳でもなく、奥様もこざっぱりとした服装をされているが、高価な、という服装ではない。

家の中の装飾品も普通の家庭の雰囲気だ。(家だけは大きい)車は庭に軽自動車が止めてある。(分からない所に高級車があるだろうが・・)贅沢な生活をしているようには見えない。むしろ倹約家の様に思える。