目覚めた私

結婚当初私は、主婦の義務と思って嫌いな家事をこなしていたが、家事は好きではない。

そのせいかどうか分からないが、私はフット心に穴が開いたような気持ちになる事がある。

そんな疑問を持つこともない方が幸せなのかも知れない。しかし、その疑問の思いがだんだん大きくなり、心を占領してしまう。

夫も子供もいて特に家族に不満があるわけではなく、むしろ幸せな家庭がある。

私は自分をどうしたいのだろう?何を求めているのか?

結婚して12年、就職したこともなく、社会を知らない。

夫からは「社会の仕組みを知らない」と言われる。でも「それでいいよ」とも言われる。

優しいのか、バカにされているのか分からないけれど、心の穴は塞がらない。

そうだ、「私も社会と関わろう」と思った。

どの様な形で?どこか勤める?新卒じゃないし、パート?

我儘な性格もあるから色々指示されるのは嫌だな、とか色々思いがよぎる。

そう、自分で何かできないか。しかし、皆目見当がつかない。

テレビで「「宅建」というものを知った。

時代はバブルの頃で、テレビのニュースで宅建試験に合格した人たちが胴上げをしている様子が流れていた。そんなに大喜びする事なんだ。世の中が浮き立っていた。こんなに多くの人達が騒ぐ宅建の資格ってどんなものなのかしら?知らない世界が目の前にあった。

これって何?夫に聞くと「不動産に関する国家資格だよ」「へー」「君には関係のない資格だよ」「そうなの」と納得した気持ちになるが、今迄考えたことのない不動産の世界と宅建。頭のどこかに残った。テレビに私の知らない世界が映されている、気になる。

宅建の本を買ってきて読んだ。法律の事が書いてあったり、建蔽率容積率。意味が分からない。知らないことを知るのも良いと思って家事もそこそこに台所で勉強した。

一応受験してみることにした。運よく合格通知がきた。夫に見せると

「良かったね。よく頑張ったよ。しかし、君には利用できない資格だよ」

「そうなんだ」とその時は思った。