72 私の配偶者はどんな人?(6)

夫には、私にない性格があります。

 

天才的と言うか、愛すべきと言うか、迷惑と言うか、ビックリします。

 

勤務先から研修という事で、単身でフランスに1年行きました。

12月のある日、突然フランスから電話が掛かってきました。

 

「夕べ財布を盗まれた。クレジットカードも入っていたので、急いで止めてくれないか」

と言うのです。

 

「え!一体どうしたの?」

 

夫の説明によると、

「エトワル広場を歩いていると、20人位でフランス人やアラブ系や、

色んな人たちがダンスを楽しそうに踊っていて、

「一緒に踊ろう」と誘われ、

僕も仲間に入って踊ったんだ。

愉快だった。

 

でも、帰りがけ、コートの中の財布がなくなっている事に気づいたんだ。

誰が盗んだか分からない。多分アラブ系の人かも?

 

盛り上がって、アラブ系の彼が僕にハグしてきて、

お互い親交の気持ちで嬉しかったけれど、

違ったんだ。

 

パスポートも入っていて、困った事になった。

取り敢えず、クレジットカードだけでも早く止めてくれ!」

 

「エ! 嫌になっちゃうわ。

呑気なおバカじゃないの。ハイ分かりました。」

 

私は、クレジット会社3社に急いで連絡を取り、カードの停止をお願いしました。

(どうして盗まれるのかしら?こちらも慌てる事になって。ビックリよ)

 

時差もあったりして、その後カードを止める前に使われていることが判明しました。

使った人はサインは漢字でしていたとか。

 

夫の話によると、

ダンスをしていた人の中にはアジア系の人は居なかったので、

きっと(想像ですが)漢字でサインを書ける中国系の人に

カードを売ったんじゃないか?

と言うのです。

 

カード会社はサインをした人の住所も教えてくれたので、その辺りに行ってみたが、

中国人社会で、何となくそれ以上近づきたくない雰囲気だったので帰って来た。

と言います。

結局、使われたのは30万円位だったので、それ位で済んで良かったと思いました。

 

それより問題なのは、パスポートです。

日本大使館に行かなければ。

 

それから6日後、

 

「あなたの財布が見つかりました。」

と、警察から電話があったらしい。

 

どうなっているのか夫も訳が分からず、取りに行った時、警察の人に尋ねると、

 

「この財布は郵便ポストに投函されていました。

郵便屋さんが回収し、警察に届けたのです。

中にはパスポートだけが入っていました。だからあなたに連絡しました。」

 

「メルシーボク―、それだけで十分です。」

と、夫は大喜び。

 

夫は私に言います。

「日本で財布を盗まれると、ポストに投函してくれないけれど、

フランスのスリは

財布をポストに投函して、自分が要らない物を返してくれる。

僕の場合、パスポートも中に入れてくれていて、素晴らしい。

なんて親切なスリだろう。

日本のスリも見習って財布をポストに入れて欲しい。」

と言って感激しています。

 

私は開いた口がふさがらない。

こちらは、カードを停止したり、大変なんだから。

ノー天気に踊ったりしないで、盗まれない様に用心する事が大切でしょ!