夫には、私にない性格があります。
天才的と言うか、愛すべきと言うか、迷惑と言うか、ビックリします。
勤務先から研修という事で、単身でフランスに1年行きました。
12月のある日、突然フランスから電話が掛かってきました。
「夕べ財布を盗まれた。クレジットカードも入っていたので、急いで止めてくれないか」
と言うのです。
「え!一体どうしたの?」
夫の説明によると、
「エトワル広場を歩いていると、20人位でフランス人やアラブ系や、
色んな人たちがダンスを楽しそうに踊っていて、
「一緒に踊ろう」と誘われ、
僕も仲間に入って踊ったんだ。
愉快だった。
でも、帰りがけ、コートの中の財布がなくなっている事に気づいたんだ。
誰が盗んだか分からない。多分アラブ系の人かも?
盛り上がって、アラブ系の彼が僕にハグしてきて、
お互い親交の気持ちで嬉しかったけれど、
違ったんだ。
パスポートも入っていて、困った事になった。
取り敢えず、クレジットカードだけでも早く止めてくれ!」
「エ! 嫌になっちゃうわ。
呑気なおバカじゃないの。ハイ分かりました。」
私は、クレジット会社3社に急いで連絡を取り、カードの停止をお願いしました。
(どうして盗まれるのかしら?こちらも慌てる事になって。ビックリよ)
時差もあったりして、その後カードを止める前に使われていることが判明しました。
使った人はサインは漢字でしていたとか。
夫の話によると、
ダンスをしていた人の中にはアジア系の人は居なかったので、
きっと(想像ですが)漢字でサインを書ける中国系の人に
カードを売ったんじゃないか?
と言うのです。
カード会社はサインをした人の住所も教えてくれたので、その辺りに行ってみたが、
中国人社会で、何となくそれ以上近づきたくない雰囲気だったので帰って来た。
と言います。
結局、使われたのは30万円位だったので、それ位で済んで良かったと思いました。
それより問題なのは、パスポートです。
日本大使館に行かなければ。
それから6日後、
「あなたの財布が見つかりました。」
と、警察から電話があったらしい。
どうなっているのか夫も訳が分からず、取りに行った時、警察の人に尋ねると、
「この財布は郵便ポストに投函されていました。
郵便屋さんが回収し、警察に届けたのです。
中にはパスポートだけが入っていました。だからあなたに連絡しました。」
「メルシーボク―、それだけで十分です。」
と、夫は大喜び。
夫は私に言います。
「日本で財布を盗まれると、ポストに投函してくれないけれど、
フランスのスリは
財布をポストに投函して、自分が要らない物を返してくれる。
僕の場合、パスポートも中に入れてくれていて、素晴らしい。
なんて親切なスリだろう。
日本のスリも見習って財布をポストに入れて欲しい。」
と言って感激しています。
私は開いた口がふさがらない。
こちらは、カードを停止したり、大変なんだから。
ノー天気に踊ったりしないで、盗まれない様に用心する事が大切でしょ!