歌舞伎町ナンバーワンホストのお客様 2

翌日も又ホストさんは迎えに来てくれて、一緒にお部屋を見に行った。

最後のお部屋を見た彼は、気に入ったようで、

「ここにしよう」と言う。

 

「ちょっと日当たりが悪いお部屋だけれど、大丈夫ですか?」

「窓は開けないで、日中もカーテンは閉めているのでかまわない」

(普通のお客様は陽当たりを気にするけれど、彼にはそういう視点はない様子)

そして、部屋の中をじっくり見ながら、寸法を測り、

「ここにべット、この場所に鏡台」等言いながら荷物の置き場を考えている。

 

そして、ビックリする事を言う。

「ベットは○○さんに、鏡台は△△さんに、冷蔵庫は××さんに買ってもらおう」

「ェ!、家具を買ってもらうの?」

「そうだよ。必要なものはみんな買ってもらうよ。僕のお金は出さない。おねえちゃんはとっかえひっかえだ」

「お部屋の契約金も頼むのですか?」

「いや、それは僕が払う」

(お部屋の契約金はホストさんが出すと言うから、アー、良かった。ホストさんの頭の中はどうなっているのか?家財道具を買う女性の気持ちも分からない。

不思議な関係だ。私はこういう関係にはなりたくないが、このホストさんとは仕事関係だし、契約金は自身で支払うと言っているので、私の仕事の範囲としては、違和感を感じなくても良いのでよかった。他の事を考えると変な気分になる。)

 

無事契約も終わって半月位した頃、たまたまテレビで歌舞伎町のホストクラブの番組があって、見るとホストさんが言っていたクラブ名だ。

アレ!と思って見ていると、あのお客様だったホストさんが出ている。

「やはり人気のあるホストさんなんだ。自身でナンバーワンと言っていたナー」と思い出した。

その1週間後、ホストさんから電話が掛かってきて、

「色々ありがとう。家具もみんなプレゼントしてもらって落ち着きました。話は変わるけど、僕の信頼している占い師が、×月×日(10日後)に富士山が爆発して、都内も大変なことになるから、安全なホテルに移動した方がいいよ。と言っている。僕はホテルを予約したけど、不動産屋さんもそうした方がいいよ」と、教えてくれた。

「富士山が噴火するんですか?大変だ。有り難うございます」とお礼を言ったが、私はホテルの予約はしなかった。

そして、富士山の噴火もなかった。

 

その後、3年ぐらいして、たまたまの事だけど、テレビでホストさんを又見た。

彼は独立して、自分の店を開店したテレビ取材だった。

お部屋を案内していた時、ホストさんは独立すると言っていたが、自分のお店を持ったのだ。

ホストさんは、私とは異なる彼なりの人生設計を描いて努力し、着々と夢を現実のものとしている。

生きる環境、又その人の人生観が違えば、色々な生き方があるものだ。