調査の結果、大いに問題があります。
オーナー様の土地は、セットバックが必要。
幹線道路から、かなり中に入った住宅地ですから、
オーナーの希望する価格ではとても売れません。
しかも、もっと大きな問題は、
3ケ月の賃料を免除するので、建物を明け渡してもらいたい。と言う希望です。
これは、お話を聞きながら無理だろうナーと思っていました。
入居されている方は、今の住まいを生活の基本場所として暮らしておられるのですから、
突然退室を申し渡される事は、
大きく言えば、その方の人生さえも揺るがすような事ですから、
入居者さんは気持ちが混乱してしまいます。
もし、お話が順調に運び、うまくまとまった時は、
余程、賃借人さんが、物分かりがよく、ラッキーだった場合です。
私は調査結果を、私見も述べ10枚のレポートにまとめました。
ご自宅にお伺いし(車で45分位の所)、調査書を手渡し、読んで戴く様お願いし、
ご自宅には上がらず、
「相談された銀行さんにもこのレポートをお見せいただいて下さい。
銀行さんも詳しく調査されなかった価格と思われます」
と言って帰りました。
調査書の要点は、
・土地の9㎡はセットバックしなければならない土地。
建蔽率60%・容積率200%で、セットバック部分は、建築面積に入れられない。
価格はその分下がります。
・オーナー様が、銀行から価格を聴いたと言う土地物件は
建築できる建物の規模が異なります。
・入居者さんが生活の基本とされているお部屋を、3ケ月で退室して戴く事は
とても無理なので、当社では出来ません。交渉もご辞退致します。
・オーナー様ご希望の価格での売却は、出来ません。
結論、今回のご依頼はご辞退させて戴きます。
という、内容です。
オーナー様のご家族への思い、又人生最後のご自身の思いは、私も十分理解できますが、
ご自身の想いや希望だけでは、事は進みません。
売却というのは、相手がいる訳で、買主が買いたいと思って成立するお話です。
オーナー様が希望する価格は、相場よりはるかに高く、
買主がそれを納得するでしょうか?
しかも、売り出す前に3ケ月で賃借人さんに退室してもらうと言うのは、
ご自分の希望が前面に出て、賃借人さんの事をどれだけ考えているのか?
と思います。
その様な私見も述べました。
翌日、お電話を戴きました。
「ガッカリした。本当にガッカリした。ショックです」
と言われました。
「私の判断はレポートに書きましたので、ご理解の程、お願い致します」
と言って電話を置いた。