51「千三つ」の青年営業マン(3の2)

大体の調査が終わったのか、

1社(A)が買い付けを入れてくれました。

(有り難うございます)

 

A社の営業マン、藤森青年は、誠実そうで、この人なら仕事もうまくいくかも・・

等、感じていました。

(直観です)

 

3日遅れて、もう1社(B)が設計図を持参し、買付を入れてくれました。

2社の価格は1000万円の差があります。

(B社の方が高い)

 

売主様の所に行き、A社・B社の購入申し込み書を見せました。

売り主様は、高い価格の方が良いとの希望でした。

(そうですよネ)

 

しかし、購入希望だけで、話が成立したわけではありません。

 

買主側の、今後の、より緻密な調査で、一層購入の気持ちが固まってから、

契約の段取りに入る訳ですから、まだ暫く落ち着きません。

(しかし、焦った気持ちは禁物です)

 

A社の営業に来た藤森氏は若い32歳の男性でした。

 

彼は、ある大手の不動産会社に3年勤めた後、

そこを退社し、現在の会社に移ったと言います。

 

勿論、会社の規模はグンと小さくなりましたが、

その会社は、マンションのデベロッパーとして10棟程建て、

堅実に成長しています。

 

今回の土地も、彼が現地調査し、購入を会社に進言したものです。

彼は、非常に積極的な人で、現地に何度も足を運び、

自分目線で、土地の環境・周りの生活環境・電車やバスの交通・学校等々調べ

又、当社にも来て色々打ち合わせしたりします。

 

役所にも行き、マンション建築について必要な情報の、

ガス・上下水道や、建築上の規制等々を丹念に調べて、

当社に必要な情報は共有してくれます。

 

当初、私は便利な人だナー、

と内心思ったりしていました。

 

彼の話を聞くと、

役所に留まらず、

 

図書館に行って、その地域の、土地に関する過去の歴史、災害状況も含め、

 

今後どのように発展するかを考える。

 

と言うのです。

 

これにはビックリ、そこまで調べ上げるの? と思う。

 

そして、彼の調査に土地が合格した様で、

 

「この土地の購入に向けて契約の段取りをしたい」

と改めて申し出がありました。

 

実は、もう1社の(B)社の方が、1000万円高いのですが、

 

A社の藤森氏の多方面に渡る,緻密な調査の姿勢は、

途中で話が崩れることは無いだろうと判断し、

 

売り主さんに現在までの状況を説明し、

 

「価格は下がりますが、落ち着いた気持ちで

手続きを進めることが出来るでしょう。

この会社で話を進めては如何でしょう。」

 

と説得し、

同意を戴きました。

 

(1000万円というのは大きな金額です。

安い金額を勧める私の提案。

それをOKするのに、売主様も相当な決断をされたと思います。

信頼して下さった事はありがたいですが、

責任重大です。失敗する事は出来ません。)

 

この時点で、B社にはお断りの連絡を致しました。

 

私は、不動産の売買には「売れれば良い」と言うのではなく

慎重をモットーとしています。

 

話が進み、契約の段取りになっても、

契約直前に、突然キャンセルになる事もあります。

 

又、買主がローンを使う場合、ローン満額の融資が出ず、

キャンセルになる事もあります。

 

お客様に依頼されて受けた仕事ですから、途中でその様な事態を避けるべく、

色々判断しなければなりません。

 

最後まで順調に進み、売り主さんに喜んで戴かなければなりません。

 

私は、「取引相手業者として、A社の藤森氏なら最後まで一緒に仕事が出来る」

と判断しました。