59 再開発の不安「国家戦略特区」

国家戦略特区は、10年前安倍政権の時に閣議決定されたものです。

それによって現在あちらこちらで、再開発が進んでいます。

多額の税金が投入されるプロジェクトです。

 

閣議決定された時は

「世界で一番ビジネスをしやすい環境を創設する」

 

という旗を掲げての事ですが、

目まぐるしく変化する、現在の社会状況は10年前と異なります。

それが通用するのでしょうか?

 

失われた20年が30年になり、40年と向かう中、

平成25年に決定された、「国家戦略特区」等と、勇ましい大層な名前がついていますが、10年経った今通用するのでしょうか?

 

渋谷の再開発ではオフィス・店舗のスペースが多いです。

 

コロナ禍では、在宅勤務も増え、多くの企業が広い事務所を必要としなくなり、解約する所が多くありました。

ネットの世界で、

若い人たちの考え方や行動も変わってきました。

 

10年前の閣議決定に基づいた、多額の税金を投入するこの開発には、不安を覚えます。

世界各国から企業が集まり、ビジネスの中心になる事が出来るのでしょうか?

疑問ばかりが膨らみます?

 

「渋谷は若者の街」と言われていますが、

今、若者は渋谷を離れつつあり、大久保に移っていると聞きます。

渋谷に魅力を感じなくなった?

渋谷のプロジェクトが完成した時、若者は戻ってくるでしょうか?

❔です。

 

10年の間に、世界が変化し、若者の意識が変わりました。

そうした時にこのプロジェクトの途中で、一部でも修正を検討する意見やチャンスはなかったのか?

若い人たちの意見を多く取り入れるべきではないのか?

若い方達の活気があり、使いやす町が良いのでは?

 

これから日本を背負う若者の力を信じるべきだと思います。

 

この開発に関わろうと、裏では大手デベロッパーは色々画策していたようです。

渋谷は東急が牙城ですが、住友不動産がAブロックを狙っていて(まだ初めの頃)、

アクションしていました。

そして、東急か住友かというアンケートが回ってきたこともありました。

結局,東急を選んだ方が多かったです。

 

このプロジェクトがどうなるのか、当社も一応最後まで関わろうと思っていますが、

どうなるでしょうか?

 

明るい展望ばかりではありません。

 

が、1つ良い事は、渋谷駅は便利になり、駅にも近い事です。

 

事務所にするか、住宅にするか選択できるようですので、

当社は事務所ではなく、住居棟を希望しようと思っていますが・・・。

 

58 再開発「国家戦略特区」

明けましておめでとうございます。

何時も読んで戴き有り難うございます。感謝しています。

本年もよろしくお願い致します。

 

 

会社所有の物件の

お部屋をお貸ししているお客様も、

静かな方もいれば、何かと賑やかな人もいる。

 

その人の個性もあるのでしょう。

何かあったら文句を言わないと気が済まない。

という人もいる。                

 

渋谷駅近くの、当社所有のマンションを借りて頂いているお客様がいる、

 

渋谷駅周辺では今、再開発が盛んですが、

Aブロック・Bブロック・Cブロック等に分けられ、順次進んでいる。

 

もう完成したブロックもあるけれど、進行中のブロックもある。

 

当社所有の小さな部屋のマンションも、開発に引っかかっているが、

2023年現在、まだこれからのブロックだ。

 

他のブロックの工事がうるさくて、入居者が当社に苦情を言ってくる。

 

入居者は整骨院をしている人だが、

 

「工事音がうるさくて、仕事にならない。

振動はするし、お客もうるさいと言っている。

これじゃあ引っ越そうと思う。何とかしてくれ」            

 

「工事の音は当社では何とも出来ません。

苦情は当社ではなく、都か渋谷区か施工会社に

言ってください。」と伝えた。

 

引っ越すのかな?と思ったが、

引っ越しする様子はない。

 

当ブロックの、開発チームの話では、

「完成は7~10年くらい先でしょう」と言う。

ずいぶん先の話だ。

 

開発のプランはもう出来上がっているが、ビルの解体はまだ始まっていない。

 

解体は、入居者さんに退去してもらって、空の状態にしてからになるが、

 

退室交渉などは開発チームがしてくれるらしい。

(面倒な事はやってくれるので助かる)

            

このマンションの理事長は元地主さんで、お医者さんです、

この地域の再開発にはとても積極的です。

 

理事会報告や、特別のお知らせ等の郵便物が年に数回送られてくるが、

理事会報告のお知らせに自身の意見も書かれていて、

 

開発の期待に心膨らんでいる様子の文面である。

 

しかし、完成はおろか、着工前に亡くなられてしまった。

残念なことですが、

色々夢を描きながら思いをはせることが出来、

楽しかったのではないかと思う。

 

 

都内では、港区・中央区・渋谷・新宿等で、再開発が盛んです。

この開発は、

平成25年安倍内閣の時、成長戦略として閣議決定された「国家戦略特区制度」です。

(北海道・福岡。神奈川等々ありますが、渋谷に限定致します)

 

「世界で一番ビジネスをしやすい環境を作ることを目的」とされていて、

200mを超えるビルが沢山建ち、広い事務所スペースが数多く出来るようですが、

令和6年の現代、そんなに多くの企業が集まるんでしょうか?

と不安も感じます。

 

大体、当社のA(仮にAとします)ブロックは、2023年に竣工と言われていましたが、

コロナ禍もあり、延びに延びて、未だに解体にも至っていません。

もう、2024年になってしまいました。

 

公共事業も関わったプロジェクトは中々進まない。

既存の道路を廃止し、新しく道路を作る計画も組み込まれています。

 

プロジェクトの担当の人が時々来て説明してくれたり、

現場近くの開発事務所に出かけて、完成時の模型を見せて説明してくれるが、

関わっている所有者の数も多いから、担当の人は大変だと思う。

                

当方としては、部屋の広さをもう少し広くしたいのだが、

(地権者として優先的に扱ってもらえるらしい。これはラッキー)

しかし、費用も掛かるので、

その準備も考えておかなければならない。

 

お金は潤沢にある訳ではないので、頭の痛い事です。

良い事ばかりではありません。悩み事は尽きません。

 

こんな調子で、何時竣工するか分からないけれど、忘れた頃に完成するでしょう。

57 困った売主さん(番外)

今回の「困った売主さん」の件を、

私は違った角度で考えてみました。

 

オーナー様について考えた事。

私の妄想です。

すでに書いた事も重複いたしますが、ご容赦下さい。

 

 

 

お世話になっております。

有り難うございます。

申し訳ない。

 

と、オーナー様は多用されます。

何故なのか?あまりに多用されるので、耳から離れません。

何度も聞くと、本来の言葉の意味と離れて、次第に嫌な感じがするのです。

その様なご性格だと言えばそれまでですが、

 

「有難うございます」と言われて、

「アー、喜んでもらえて良かった」と素直に私に伝わる、

「有難うございます」はありますが、

オーナー様の「有難うございます」は素直に伝わらず、

違和感があります。

 

オーナー様は

粘り強く、諦めない

当方が断っても、尚、連絡してくる。(1度や2度ではありません)

 

こうした行為は中々出来る事ではありません。

単純に、こうしたご性格だと思えないのです。

 

「お断り致します」と2度も言われれば、普通の方は諦めます。

しかし、オーナー様は諦めない。

 

現役時代、仕事に対してどのような姿勢で向かわれていたのだろ?

と考えてしまいます。

 

順調に進まない、難しいお仕事もあったでしょう。

しかし、断られて完全に糸を切るのではなく、細い糸を残しておく。

 

場面が変われば、その細い糸が生きることがある。

 

仕事をする中で、Aさん・Bさん・Cさん、それぞれに性格が異なります。

ある甲企画では、Aさんの性格が有効であり、乙企画ではBさんが活躍し、Aさんは役に立たない。又、別の企画ではCさんが活躍する。

ということもあるでしょう。

 

物事はどの様に展開するか分かりません。

将来の布石の為、異なる意見も細い糸でつないでおく。

仕事の場面での展開は、時として180度変わり、思わぬ方向に進む事もあります。

 

その時の為の、

 

お世話になっております。

申し訳ない。

有り難うございます。

 

という事(細い糸)ではないだろうか?

 

相手に断られても、上から目線と受け取られることなく、相手に不快感を与えず、

次に連絡をした時に相手と話が出来る雰囲気作りを残しておく。

 

「ガッカリした、ショックです」と言いながら、

お話しぶりは、いつも穏やかです。

 

心の中では、「断られて腹が立つ」と思っているのかも知れません。

しかし、穏やかに話されます。

 

老練な、ある意味高度な、非常に緻密なテクニックです。

そうして、最後にご自分の計画を成功させる。

 

仕事場でオーナー様は、省内外で色々な方々との交渉を多く経験されておられるはず。

 

そんな事が頭に浮かびます。(妄想です。)

 

その後、オーナー様の奥様は、癌が転移されたようで入院されました。

其のことを気落ちした様子で

 

「毎日見舞いに行っています。時間がなく大変です」と話されます。

その状況に、私の心も揺らぎますが、

私は仕事として出来るか・出来ないか、の立場を

ブレないように、優先したいと思います。

 

 

各省庁の偉い方が、国会答弁等で、私には訳が分からない答弁をされている事がありますが、私の頭は単純ですから、回答されている事がよく理解できないことが殆どです。

 

あまり複雑な思考で来られると、私の頭の中の糸が絡まって、ほどけなくなります。

受け入れる事が出来なければ違和感が生まれ、心を病んでしまいます。

私は、素直に受け入れられる、単純な方が良いです。

 

オーナー様の、心の奥を考えるのは疲れます。

結果、このオーナー様のご依頼をお断りしたのは、

私自身の仕事の為に、良かったと思っております。

 

「この不動産屋は使えないナー、だめだナー」

と思ってもらいたいものです。

 

本当に使えない不動産屋なのですから。

56 困った売主さん(4の4)

当社は、オーナー様のアパートの管理委託を受けている訳ではないので、

(オーナーさんはどこにも管理委託を頼んでいません)

立ち入った意見は控える様にしています。

 

まだ10月ですが、12月・1月・2月の3ケ月はフリーレントで、2月の末の

退室をオーナー様は希望されています。

それ以上の譲歩はしたくない様です。

 

今後、オーナー様はどの様に事態を収めるのでしょうか?

他の3室の方は、まだ何の反応もないようです。

 

 

こんな状況の中、ある事件が起き、テレビ報道されていました。

 

2023年10月31日

「埼玉県蕨市で立てこもり事件」

 

拳銃を持った86歳の男姓が郵便局に立てこもったのです。

(最近の事件なので報道を見られた方もあるかと思います。)

 

この犯人が住まいしているアパートのオーナーは

「アパートを取り壊すので、2月までに出て行って欲しい」

と言っていたそうです。

 

この事件をひき起こす原因は、病院・郵便局に不満があったようですが、

犯人が住んでいるアパートの事(直接原因かは分かりませんが)も報道されていました。

そして、アパートにも火をつけたようです。

 

Aアパートのオーナー様の状況とよく似ている所が一部あります。

・建物を壊すので

・2月までに退室してほしい

偶然にも、

入居者さんに退室してほしい時期も同じくしています。

 

Aアパートには、この事件の犯人のように凶暴な人はいませんが、

部屋を出ていかなければならいという事は、住人にとって容易なことではありません。

 

Aアパートのオーナー様は、この事件の報道を見られたはず。

どの様な感想をもたれたかしら?  

等 私は思っていました。

 

その5日後、例の賃借人さんから電話があり、

「オーナーさんから連絡があり、あなたの希望を受け入れましょう」

と言ってくれました。

 

嬉しいです。安心して引っ越しが出来ます。

色々話を聞いて戴き、有り難うございました。」

 

「よかったですね。私も安心しました。」

 

その翌日、オーナー様からお電話がありました。

 

「埼玉県蕨市で事件がありましたが、賃借人さんにとって、引っ越しは大変な事だと

思うようになりました。

引っ越ししやすいようにしたいと思います。」

 

「よかったです。」

 

私は、

オーナー様は、定年後、ご家族に対しては優しいお気持ちを持たれるように

なりましたが、

賃借人さんや、対、外に対してのお気持ちは、相手の立場を配慮するお気持ちが

少し欠けていたように思っていましたが、

 

今回の事件の報道を見て、

オーナー様も自身の考えだけでは、強引に事を進める事は出来ない。

と、お考えが少し変わったのでは?

 

と、思いました。

 

 

しかし、売却価格については、まだ硬い気持ちのままの様です。

当方のレポートを銀行さんに見せていないのは、

 

ご自身の、強い売却希望価格だと思われます。

当社が受けることが出来ない価格です。

 

「早くほかの不動産業者さんに相談に行って欲しいナー

そして、相場というものを理解して欲しいです。」

 

(不動産は買う人がいなければ売れないのです。

それに気づかないと・・・

みんな知っている事ですよ。)

55 困った売主さん(4の3)

その5日後、又電話が掛かってきた。

 

オーナー様は勤務先で、省の事務次官とお酒を飲んだりされておられたとか、

それなりの地位におられた方の様です。

 

「セットバックの事は分かりました。

しかし、やはりあの価格で売って下さい。」

 

「お渡しした当方の調査書を、銀行さんに見て戴きましたか?」

「見せてません」

 

「どうして見せなかったのですか?」

「・・・・・・」

 

 

「当社の意見はあのレポートに示した通りで、お受けすることは出来ません。

どうぞ、他の業者さんにご相談されて下さい」

 

「ショックです」

 

と言って電話が切れた。

 

オーナーさんが、ご家族に対して贖罪の気持ちがあり、

ご自身で出来る限りの事をしたい、

それにはあの価格の金額が必要なのでしょう。

そのお気持ちはよく分かりますが、・・・

 

価格は自身の気持ちで決められるものではありません。

それを、ご自身の中でどうしても受け入れられない様子です。

オーナーさん所有の土地が、何か特別な付加価値があり、

買主が是非欲しいと言う土地なら別ですが、残念ながら普通の土地です。

 

民間の商取引を理解しておられるのでしょうか?

 

又、電話が掛かってきました。

 

「入居者さんに退室のお願いをしたいが、どうしたら良いか?」

 

「当社はお手伝いすることが出来ませんので、ご自身でお伝え下さい。

皆様には穏やかに話された方が良いですよ」

 

「分かりました」

 

又、電話が掛かってきた。

 

「昨、日曜日、手紙を持って皆さんのお部屋を訪ねました。1部屋だけご在宅で、

後はお留守でしたので、ドアに手紙を下げてきました」

「そうですか。当社はお手伝い出来ませんから、御報告いただかなくても良いですよ」

 

何だか私も冷たい表現になってきました。

 

しかし、お断りしたのに、

オーナー様も諦めない、粘り強い方です。

 

オーナー様は穏やかな話し方をされる方です。

 

「ありがとうございます」

「お世話になっています」

「申し訳ない」

等々、会話の中で頻繁に使われます。

 

しかし、ご自分が決断した事は頑なに揺るぎません。お気持ちは硬いです。

 

お役所の中では、粘り強い、そうした態度で、ご自身の要望が通ったかも知れませんが、

 

私はオーナー様の部下ではありません。

 

お役人気質のままなのかナー

申し訳ないと思いますが、私は私の判断で動きます。

 

その後、当社が入居のお世話をした方からお電話がありました。

 

「突然、オーナーさんから建物を取り壊すので、2月に退室してほしい。

賃料は3ケ月分は免除します。と手紙が来ました。

 

引っ越しは構わないけれど、3ケ月分の賃料免除だけでは費用が足らない。

オーナーさんの条件は一方的だ」

という。

 

「退室についての条件は、オーナー様のご判断なので、どのような条件かは

オーナーさんと話し合って下さい。

退室交渉については、当社はタッチしないと、オーナーさんにも伝えてあります」

と返事した。

 

その後、彼は東京都の「不動産相談窓口」に相談した様子で、又電話が掛かってきた。

 

都の担当者は

「3ケ月のお家賃免除は少なすぎる。

建物を壊すのにクリーニング費用を取るのはおかしい」と言われた。

 

その事をオーナーさんに伝えると、

 

「クリーニングして壊すので、クリーニング費用はご返却出来ません。」

と言われたと言う。

 

私は、「前回にもお話ししましたが、退室の条件についてはオーナー様と話し合って

決めて下さい。当社が決めることは出来ません」と伝えた。

 

やはり、双方の想いが、かなり食い違っているようです。

54 困った売主さん(4の2)

調査の結果、大いに問題があります。

 

オーナー様の土地は、セットバックが必要。

建蔽率60%・容積率が200%で、場所が新宿とはいえ

幹線道路から、かなり中に入った住宅地ですから、

オーナーの希望する価格ではとても売れません。

 

しかも、もっと大きな問題は、

3ケ月の賃料を免除するので、建物を明け渡してもらいたい。と言う希望です。

 

これは、お話を聞きながら無理だろうナーと思っていました。

 

入居されている方は、今の住まいを生活の基本場所として暮らしておられるのですから、

突然退室を申し渡される事は、

大きく言えば、その方の人生さえも揺るがすような事ですから、

入居者さんは気持ちが混乱してしまいます。

 

もし、お話が順調に運び、うまくまとまった時は、

余程、賃借人さんが、物分かりがよく、ラッキーだった場合です。

 

私は調査結果を、私見も述べ10枚のレポートにまとめました。

 

ご自宅にお伺いし(車で45分位の所)、調査書を手渡し、読んで戴く様お願いし、

ご自宅には上がらず、

 

「相談された銀行さんにもこのレポートをお見せいただいて下さい。

銀行さんも詳しく調査されなかった価格と思われます」

と言って帰りました。

 

調査書の要点は、

・土地の9㎡はセットバックしなければならない土地。

 建蔽率60%・容積率200%で、セットバック部分は、建築面積に入れられない。

 価格はその分下がります。

・オーナー様が、銀行から価格を聴いたと言う土地物件は

 商業地域・建蔽率80%・容積率500%であり、

 建築できる建物の規模が異なります。

・入居者さんが生活の基本とされているお部屋を、3ケ月で退室して戴く事は

 とても無理なので、当社では出来ません。交渉もご辞退致します。

・オーナー様ご希望の価格での売却は、出来ません。

 

 結論、今回のご依頼はご辞退させて戴きます。

 

 という、内容です。

 

オーナー様のご家族への思い、又人生最後のご自身の思いは、私も十分理解できますが、

ご自身の想いや希望だけでは、事は進みません。

 

売却というのは、相手がいる訳で、買主が買いたいと思って成立するお話です。

 

オーナー様が希望する価格は、相場よりはるかに高く、

買主がそれを納得するでしょうか?

しかも、売り出す前に3ケ月で賃借人さんに退室してもらうと言うのは、

ご自分の希望が前面に出て、賃借人さんの事をどれだけ考えているのか?

と思います。

 

その様な私見も述べました。

 

翌日、お電話を戴きました。

 

「ガッカリした。本当にガッカリした。ショックです」

 

と言われました。

 

「私の判断はレポートに書きましたので、ご理解の程、お願い致します」

と言って電話を置いた。

53 困った売主さん(4の1)

あるオーナー様から、

「Aアパートを売って欲しい」と依頼がありました。

 

そのAアパートは当社の近くにあり、オーナー様とも長くお付き合いをさせて頂ています。

 

場所は新宿に近く、20坪。

4人の入居者さんがいます。

 

オーナー様が話されるには、

 

「銀行で聞いたが、○○〇万円で売れるでしょう」と言われたので

その価格で売って欲しい。」

 

「3ケ月で入居者さんには出て行ってもらいたい。3ケ月分の賃料は免除いたします。

その後、解体して、更地にして売りに出したい」

というご希望です。

 

私は

「価格はこれから調べますが、

3ケ月で入居者さんに明け渡してもらえるか否かは不透明です。

入居者さんは、生活の基本の場所としてお借りされている訳ですから、皆さんが素直に応じられるかは分かりません。

 

イヤだ、と思われる方がいれば、半年、1年と長引くかも知れません。

売却価格は安くなりますが、入居者さん有で売却、という方法もありますよ」

 

「いや、建物を壊し、更地にして売りたい。その方が高く売れる」

 

「そうですか、取り敢えず、土地の調査をして、当社なりの判断をお知らせ致します」

と話しました。

 

 

それから、オーナー様はご自分の家庭の事情を話し始めました。

 

私は役人で、現役時代は○○省で働いていました。

仕事一筋で、家庭の事は妻に任せきりでした。

子供は、息子は2人です。

 

昔は、親の期待通りに成長してくれなかった事に不満がありました。

 

下の息子は結婚しましたが、途中離婚し、中華料理店で働いています。

将来は自分の店を持ちたいと言います。

 

長男はSNSで2年程やり取りしていた女性と結婚しました。

始めは、アレ?と思いましたが、

昔とは違うのですね。

 

今では、結婚してくれて感謝の気持ちです。

 

しかし、私の定年前、長男が交通事故に遭い、2ケ月ほど入院しました。

足に後遺症が残り、杖をついています。

 

定年から10年になりますが、

私は、現役時代は、息子たちの話をじっくり聞いてやることはしませんでした。

 

そして、

妻が病気になり、喉頭がんで手術をし、声が出なくなり、今は筆談です。

 

思えば、私は今まで家族の事に思い至らず、仕事だけを頑張ってきました。

 

仕事を頑張る事、給料を家庭に入れる事が男の仕事で、

それが家庭の幸せに繋がると思っていました。

 

しかし定年後、家族に目が行くようになって、

家族の心がしっくりいっていないことに気が付きました。

 

家族に心を寄せることなく、

私が仕事・仕事ばかりで人生を走ってきた事がいけなかったのだと、

今やっと、気づきました。

 

家族の皆に申し訳ない。

今後の私の人生は、家族への贖罪だと思っています。

 

その為に、今持っている貯金と、アパートを売って、

長男には自分の家を買ってやり、

下の息子には店を持たせてやりたい。

 

そして、妻にも心穏やかな生活をしてもらいたい。

その為に、○○〇万円で売りたいのです。

○○さん(私の名前)宜しくお願いします」

 

「とても素敵なお話で、私も嬉しくお聞きすることが出来ました。

有り難うございます。

当方でも、アパートの調査をし、ご連絡させて戴きます」

 

オーナー様は帰られ、翌日私は物件の調査を始めました。

建蔽率容積率・接道の状況・その他近隣の相場、等々調べました。