社長の椅子に座ってみた

会社名は、夫が「僕が考えよう」と言ってくれたのでお願いした。

社名はカタカナ名で、社名だけだと何の会社か分からない。

夫が「この名前なら不動産が駄目になっても他の業種にすぐ移行できる」なんて言う。

そんな事を考えていたんだ。長く続かないだろうと思っているのが伝わった。

私の中にも不安要素が一杯で、返す言葉がなかった。

窓にはフリルのついた可愛いカーテンだけをつけた。(女の子だから)

事務所といっても一応路面店舗である。道を聞く人が入ってきたり、新しい店が出来たので興味本位に入ってきたりして、

「何のお店ですか?」と聞かれたりした。

近所を営業している人が来たりすることもある。大体何の用事もない人だ。

ある日、アットホームの営業マンが来た。

新規開店の会社は、不動産協会から公開される。

「不動産屋さんですか?」と聞く。

アットホームの人にもよく分からなかったんだ。

会員になると、賃貸部屋の情報とか売買の情報とかのチラシを持ってきてくれるらしい。

これは良いことを聞いたと思い、早速会費を払って会員になった。

それからアットホームの営業マンは、賃貸や売買のチラシをドサッと持ってきてくれる。(自分で調べなくても、こうして情報が向こうから来るのは便利だ)

本当の事を言えば、私は一人暮らしをしたことがない。

笑われるかも知れないけれど、礼金・敷金という言葉さえ知らなかった。

不動産の賃貸の基礎知識を知らないで事務所にいる訳だけど、やはりこれではいけないと思って、アットホームの営業マンが来た時、お茶とお菓子を出して色々話を聞くことにした。

アットホームの営業マンは「何も知らない人だ」と思ったのか、不動産業界の事を色々教えてくれる。どの話も私には為になり、営業マンはそれが分かるのか、1年生の生徒に教えるように楽しそうに話してくれる。               

どこの不動産屋さんも大体ガラスにチラシを貼ってあるが、なぜか私はそのスタイルが嫌いで、カーテンだけをつけているだけなので、アットホームの営業マンが、

「カーテンはやめて、外に向けて募集チラシを貼らないとまずいですよ」と言う。

来るたびに言う。何度も言う。

「いやだなー」と思いつつ、アットホームが持ってきてくれたチラシをいくつか張った。

通りがかりの人がそのチラシを見るようになった。                                         

営業マンは世の中の事をよく知っている。色々な話を聞かせてくれて、結構ためになった。

しかし、チラシを見た人が入ってきたら面倒だなーと思う気持ちもあった。

お仕事をしているのだから、この気持ちを克服しないといけない。と思う。            

夫は私の事を「君は世間の事を何も知らない」とよく言っている。こういう事もその1つかな?