61 忘れられない賃借人(7-2)

国税は国家権力だから手心は加えない。

自己破産をしても、非免責債権の税金は逃れることは出来ず、

支払わなければならない。

消費者金融よりも怖いです。)

 

初期の2000万位の時に、

お母さんが分割でも良いから少しづつ払っておけば良かったのに・・・。

 

と私は思うが仲の悪い義理の親子、

 

あれこれ言う立場ではないし、

何とか出来る状況は過ぎてしまって、

もはや、どうにも出来ない深刻な状況になってしまっているので、

 

「そうなの」としか言えない。

 

しかし、店ではよく働いている様子だし、

奥さんと2人一生懸命だ。

家賃もしっかり入れてくれている。               

 

彼(飯田さん)は家賃を持参するついでに、大家が不動産屋だから何かと心配事を話す。

 

国税から「こんな手紙が来た」と見せる。

 

国税の職員が来て「公売にかける」と言われた。等、

 

しかし、彼とすれば何を言われても何もできない。

「ない袖は振れぬ」という状況だ。        

 

国税は早くこの問題に決着をつけたい様子はありありだけど、

 

国税がどうしても動けない権利関係が登記簿謄本の中にある。

(詳しくはかけないが・・)

 

国税としても、何ともならない事案で、ジダンダ踏んでいるのが

登記簿と、国税とのやり取りで、聞き取れる。

 

当初、彼が店を借りたいと来た時、賃借人は奥さんで、彼と義母が連帯保証人として

申し出た。その時、義母の登記簿謄本を持って来た。

義母の土地、家屋の登記簿謄本はきれいなもので、義母はかなりの不動産の所有者で、問題は全くなかった。

契約者が奥さんである事に、少し違和感も感じたが、

彼と義母が連帯保証人でもあり、奥さんと連帯して責任があり、義母には多くの不動産所有があるので、私はその違和感をスルーしていた。

 

この時点では、彼にここまで多額の税金の負債があるとは思わなかった。

飯田さんが契約者になれば、彼の謄本も私は調べるでしょうから、私は断る事を

考えたかも知れない。

 

今思えば、飯田さんは会社もしていたのだから、その辺りの事はよく考えていて、

契約できるような環境造りをして来たのだと思う。

義母の謄本はキズ一つない奇麗なものですから。

契約には義母も来て、連隊保証人として印鑑証明書を出し、実印で捺印した。

 

それにしても、今になって、よく自身の事をペラペラ話すものだナー。

私は聞くだけで、何もできないのに・・・・。

 

その後、義母とは、契約時よりももっと関係が悪くなっていく。

 

 

義母は70代半ばだけれど元気にしている。

彼は義母の財産は放棄すると言っている。

 

(相続すると、すぐさま国税が債権回収に入る。

国税は相続してもらって滞納税を回収したいでしょうから・・・)

 

奥さんと一人息子は母親の養子になっているので、

母親の財産はその二人に行くことになる。        

 

そんな状態が10年程続き、心労もあって体を壊したのか、

彼(飯田さん)は心臓を悪くした。

 

20日程、入院もした。

(この頃は、義母との関係は益々悪く、彼の入院費の無心も断っていた)

              

退院した彼から相談を受けた。

 

「自分名義の空いている部屋を貸すことは出来ないだろうか?」と、

 

病院にも通うようになったし、お金もかかる。

 

お店も休む日があり、

妻一人だけでは店は出来ない。

 

「収入も減るので、家賃が入れば助かる」という。

 

彼にとっては必死の頼みだという事は分かる。

 

しかし、私は彼のマンションの登記簿謄本の内容も知っているが、

ガチガチに差し押さえられている。

 

入居するお客様には、お部屋について告知しなければならない事もある。

 

しかも、お部屋は放ってあるので、荒れて貸せる状態ではないだろう。

関わりたくないのが本音だ。

 

「お母さん所有のお部屋は、近くの不動産屋さんに頼んでおられるでしょ。

そちらに頼んだらどう?

私は遠慮したい」

 

彼はその時は諦めた。