正月の松の内が明けて、奥さんから電話が掛かってきた。
「夫が、12月30日に亡くなりました。家族で葬儀を済ませました」
私は、翌日香典を持ってお線香をあげに行った。
彼女は憔悴しきっていた。
「お酒を飲んでいるんじゃない?」彼女は頷いた。
「あなたがしっかりしないとご主人が悲しむでしょ。アルコールは控えてね」
「はい。」
「アノー、・・・・・・・・お店の事は出来ません。すみません。宜しくお願いします」
と思い詰めていた事を一気に言葉にしたように早口で言った。
彼女は頭を下げたまま私の顔を見ない。
エー、困った。
店は営業当時のまま、鍋も流しにつけてあるし、
大きな冷蔵庫の中には食材料があり、
テーブル・椅子・食器等はそのまま。
元気なら明日から開店できる状態だ。
(これ、どうするの?
アルコール依存症になっているこの奥さんには無理だよね。)
私は頭痛がしてきた。
連帯保証人の、彼の義母は再婚当時から宗教にはまっていて、
年季が入っていると聞いている。
義母は亡夫から相続した多額の財産・不動産や賃料収入のお金があるが、
その一部を献金しているらしい。
現在、89歳だが病気もなく元気にしている。
週5日位、教祖様の身の回りのお世話をしに通っていて、
何事も教祖様に相談し、指示を仰ぐらしい。
(義母は高齢だけれど、教祖様は義母より1つ上らしい。
お世話をする方もされる方も高齢で大変。)
義理の息子夫婦を、
「信心しないから、病気になるんだ」と常々怒鳴っていたらしい。
(信心しないから、という言葉はスナックのママからも聞いたことがある。と思い出した)
しかし、義母は、契約上連帯保証人で、今や義母しか居ないのだから、
当方は、義母に請求するしかない。
お店に行って写真を何枚も撮った。
(後で必要になるだろうと思って)
業者を呼び、荷物を全部運び出し、スケルトン状態にする費用を2社に見積ってもらった。
管理人がいるビルなので、
管理人とうまくやってくれそうな業者にしたい。
見積もり金額が出た。
未納賃料も計算して、全体の金額を把握する事が出来ました。
保証金も預かっているけれど、未納賃料・撤去費用をカバーするには、とても間に合わない。
私は義母と3度ほど会っているが、
心配事があると教祖様・税理士・弁護士等に相談するしっかりした所がある。
顔見知りであるし、なるべく長引かせないで片付けようと思ったので、
弁護士に依頼することにした。
契約書・連帯保証人に関する資料・写真・工事見積書等、必要な書類を揃えて、
知り合いの弁護士にお願いした。
弁護士は訴状を裁判所に提出した。