私は建物の構造についてあまり知識がない。
こうして建物管理や売買の仕事をするには、建物の構造について、ある程度の基礎知識がないと困る、と思った。
建物の外から見えない所や、お部屋の中の目に触れない部分、
柱・梁・床下の構造や壁のクロスの下は何材で出来ているとか、
どれ位の厚みの材料を使っているとか、
知らない事ばかりだった。
建築の勉強をしなければ・・・。
私の勉強方法は何か目標を設定して勉強をするスタイル。
今回は2級建築士を目指そうと思った。
1次試験の筆記試験、2次試験の製図の試験がある。
本を買ってきて勉強。
1次試験の筆記試験は合格した。
次が製図の試験。
与えられた課題を基に、制限時間内に設計図面を書かなければならない。
これは分からない。自分一人では全く書けない。学校に行こう。
新宿の日建学院に入学した。
先生に「何も知らないんですね」と笑われた。仕方がない。
そのクラスは15人位で色々な人が勉強に来ていた。
建築現場で働いている人、住宅メーカーの営業マン、私の様に女性で不動産の仕事(社長)をしている人も居た。
女性で一級建築士の人も居た。
「どうして2級を?」と聞くと、
「1級はコンクリート建築が多いけれど、2級は木造だから、木造の事を知りたい」と言う。建築のすべてを把握しようと思っているのだ。えらいナーと思った。
そのクラスの人達は仲が良く、授業が終わると先生も一緒に、学校近くの居酒屋に行ったりした。そこではそれぞれの事を気さくに話し、仕事で成功した話、失敗した話等、私にとってはみんなの働きぶりの話を聞くのは楽しかったし勉強になった。
1年間勉強して試験を受ける訳だけど、私も図面を一応一人前に書けるようになっていたし出願もした。
しかし、試験5日前、私の母が亡くなり(地方なので)帰らなければならなくなり、その年の受験は断念せざるを得なかった。(人生にはこうした事が突然あるものですね)
もう1年学校に通い、翌年は合格して、2級建築士の資格を取得した。
合格後、2年位は予備校から「一級を受けて下さい」と言うセールスの電話が、うるさく何度もあったが、製図の試験で(細かいので)目が良かった私は目を悪くしてしまった。
これ以上目を悪くしたくないし、不動産に1級は必要ないと思って受けなかった。
しかし、2級の勉強をしたお陰で、建物に対する見方も、視点も変わり、物件評価も的確になり、その後の不動産取引に大いに役立ちました。
友人の女社長さんも合格し、その後彼女とはよく会って食事をした。
彼女は所有不動産も多く、知識も豊かで教えてもらうことも多かった。
彼女の事務所は港区のマンションの中の1室で、中年の男性と二人でやっていた。
彼女はお金持ちらしい。
彼女の夫とは、お金遣いが荒いので離婚した。と言っていた。
(彼女は勝気な所がある)
従業員の男性は、大手建設会社に居たけれど、「うちに来ない?」と言って彼女が引き抜いたらしい。
その後も、彼女との付き合いは続いた。
仕事で関わることはなかったけれど、食事をしながら情報交換をする。
話を聞くと、彼女は大胆だ.自身の相続があった時、北海道を見に行って駅前のアパートを買ったと言う。
「どうしてそんな遠い所を?」と聞くと、「利回りが良いから」
「管理はどうするの?」「向こうの不動産屋に任せてある。東京にも戸建てを2軒買って貸している」
彼女の頭は東京だけじゃないらしい。海外にも興味があるので見に行きたい。と言っていた。
彼女の発想は、私のラインを越えたところからの発想に思えた。
従業員の男性と三人で食事をした事もあったが、彼も「社長は大胆で、思い切りが良い」と同じ感想。彼女は経済の知識にも長けている。
彼女に聞いてみた。
「知り合いから売買を頼まれる事があるけれど、知り合いは友人の不動産屋だから、(安くしてくれる、得なことがある)と期待している所が感じられるのだけれど、そんな時どうするの?」
すると彼女は「仲介手数料は規定通りに戴きます。
仕事なんだから、情を出したら駄目よ、それが出来なければ仕事は受けない方が良い」
と言われた。
「彼女はすごい。クールだナー」と思った。私は情が入ってしまう。
こんな私だとどこかで失敗してしまうかも。
今の私は彼女の様な切れ味鋭い所はない。
しかし、自分の力に合った事をやって、少しずつ成長出来るようにしよう。