前出のA地主さんの相続登記の話に戻りますが、
A地主さんはご自身の気持ちを通したいという性格です。
(話が長いのは相変わらずです)
又、几帳面な性格でもあります。
地主さんは結婚して男子(M君)が出来ましたが、奥様とは離婚され、お子さんは跡取りですから、ご自身の手元で大事に可愛がって育てています。
息子さんを連れて当社に立ち寄ることもしばしばでした。
甲大地主さんが相続登記をしないことがA地主さんは気にかかっていましたが、
息子の代になっても相続登記が出来ない状態だと、息子が苦労すると思われたのか、
とうとう弁護士さんに依頼し、原告となって裁判を起こしました。
訴因は「自分名義のものはすべて甲地主さんに贈与する」というものでした。
(贈与すると言うのですから、甲地主さんにとっても嬉しい話だと思いますが・・・)
所が、相手側は、
「贈与は受けるが、贈与税を払うのはいやだ。A地主側で払うなら贈与を受けても良い」
と反論してきました。
相手側の甲地主さんは、A地主さんが及ばない位大金持ちなのに・・
しかも、甲地主さんの財産は増える事になるのに・・・分からない。
そう言えば、入るものは(お金)は良いが、出ていくお金は僅かでも嫌だ。
(贈与税もしかり)と言っていた事を思い出しました。
裁判は1年半位、結構長く続き、最終的な結論は、
A地主さんは、相手方の為に贈与税を支払い、ご自身の所有権のある土地を甲地主さん名義にし、弁護士費用を払い、自身の登記簿謄本を奇麗にされました。
甲地主さんは、贈与税も支払わず、A地主さんの土地を自分の名義にしたのです。
しかし、甲地主さんの「手数料を払わない。出ていくお金は嫌だ」
という気持ちは変わっていなかったのです。
A地主さんは甲地主さんに吞み込まれてしまいました。
でも、A地主さんはM君の為にスッキリされ、良かったと思う。
A地主さんも安心された様子。
その2年後甲地主さんは亡くなられ、息子さんが当主になられました。
当主の息子さんにも何度かお会いしていますが、
「あまり多すぎてお金なんかいらないよ」と言っていました。
甲地主さんが亡くなられてから、当店に来られた事があり、
(お金は要らないと言っていたのに)その時のお話をしていて感じることは、
ご自身が当主になられ、甲地主さんにも増して、お金に執着が強いお気持ちの会話でした。
(アー、同じなんだ。反対の事を言っているんだ)と思いました。
お付き合いをさせて戴いているオーナーさんは何人かおられますが、中にはなぜか気の合わないオーナーさんもいます。
人間ですから、色々あります。
原因は私の方かオーナーさんの方かと考えても仕方ないので、
トラブルになる前にチャンスを見つけて手を引くようにしている。
仕事としては我儘だと思うけれど、変な主張をされたり、
おかしいナーと思う時は辞退させて頂く。
しかし、お付き合いが続いているオーナーさんは長い。
どうしても2分されてしまう。
今では性格だから仕方ない。
私はこういうスタイルと割り切る事にしている。
2024年4月1日から相続登記の義務化が始まります。
こうした問題はなくなることを期待します。
しかし、
「正当な理由なく登記・名義変更をしないと過料が10万円以下」
というのでは
お金持ちの方にとって、どれだけの効果があるのかな?
と思う気もしますが・・・。